羽田より遠いけど成田が好き

航空関係の情報多めな20代のつぶやき

JALのビジネスクラスはなんかいろいろ凄かった 2017年9月 モスクワー成田

滅多に乗らなかったJAL

JAL日本航空)は私が人生で初めて乗った航空会社。飛行機が怖かった私に親身に接してくれたチーフパーサーが今でも忘れられない。

しかしJALは私の航空会社選びに引っかからない。理由はいろいろあるが、今までデルタ航空ユナイテッド航空でマイルを加算しているというのが一番大きな理由である。しかしそんなJALに乗る機会が訪れた。

 

モスクワに行くことなったのだが日本からモスクワへはJALアエロフロートしか選択肢がない(当時)。デルタマイラーとしてはアエロフロートだが個人的にあまり良い印象を持っていない。その上モスクワの空港は悪名高き「シェレメチェボ空港」である。今はどうか知らないが、荷物の紛失など良い噂を聞かないことから可能な限り避けたかった。ソウル経由の大韓航空アムステルダム経由のKLMという手段もあるがどちらもシェレメチェボ空港である。

そこで久しぶりにJALの国際線に搭乗することとなった。最後に乗ったのは当時から数えても10年前、JALではなくて系列の日本アジア航空という今無きJALの台湾路線専用航空会社であった。

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 モスクワの地に鶴丸

用事も全て終了し、モスクワ・ドモジェドボ空港にやってきた。JALは2020年スケジュールよりドモジェドボ空港から再び悪名高きシェレメチェボ空港に移管している。この悪名とは荷物の紛失、盗難等のことであるが、ドモジェドボ空港に到着するとロシアの航空会社のパイロットや客室乗務員まで荷物を盗難防止のビニールグルグル巻きにしていたのでドモジェドボも似たような状態かもしれない。その上、ドモジェドボ空港は過去に自爆テロの現場になっている。モスクワでは空港に入る時には全ての荷物検査と金属探知機を通る必要があるし、鉄道のターミナル駅でも同様の状況である。さすがに地下鉄はそこまでではなかったが中国などでは地下鉄に乗る時も荷物検査を受ける必要がある。ただシェレメチェボと異なりターミナルが1つだけなので簡素でわかりやすいという利点がある。

 

ドモジェドボは主にワンワールドスターアライアンス航空会社が乗り入れており、ロシアのS7航空の本拠地の1つでもある。ターミナルには黄緑色の機体が並んでいる。ワンワールドなのでJALとの提携も多いが、JALは元々スカイチームアエロフロートとの提携関係が強く、今年からシェレメチェボに移動するがそういった理由もあるのではないだろうか。

そしてロシアの空港は異様に放置された航空機が多いことが気になる。ソ連時代、ロシアの航空会社は全てアエロフロートソ連航空であった。しかしそれは総称で実際は各地域・各空港にセクションが置かれていた。ソ連崩壊後にそれぞれが独立した航空会社となり相当な数の航空会社が誕生した。(ベビーフロートと呼ばれる)S7航空も元々はアエロフロートノボシビルスク支社が起源である。しかしその数に見合うだけの需要もなく多くの航空会社が廃業、ウラジオストク航空などは独立したにも関わらずアエロフロートに吸収されている。そういった廃業した航空会社の航空機が所狭しと並んでいる。新しいところではどこかから中古で購入したB777-200やB757-200。しかし多いのはソ連時代の航空機でIL-62やTu-154、Tu-134あたり。今でもロシアの国内線などでは現役で飛んでいるが相当古い。私もIL-62やTu-134は乗ったことがあるが本当に大丈夫か恐ろしかったことを覚えている。

 

チェックインも全て済ませて搭乗ゲートのそばまで行くと「JAPAN AIRLINES」の機体と鶴丸が飛び込んできた。

昔、海外に赴任している人や南米移民が鶴丸を見ると日本を感じたと言うがその気持ちはなんとなく分かった気がした。特にロシアは英語も通じない(英語表記すらない)、基本1人行動だったので鶴丸を見たときに「ああ日本に帰るんだ」と安心した。周囲には日本人観光客が多く、久しぶりに日本語を聞き再び安心したことを覚えている。

 

「あ、キャビア買われました?いくらでした?」

「あ、やっぱ空港は高いですか?」

今回はありがたいことにビジネスクラス。空港のラウンジで休んでいるとそんな日本語が聞こえてきた。ビジネスクラスでロシア旅行を楽しむのは結構ご高齢のツアー客である。皆お土産はキャビアのようだ。そしてどれだけ安く買えたかを自慢しあっている。

私も実感したことだが、ロシアはこういったお土産品の値段幅が広い。この時、マトリョーシカを購入したが同じものを市内のお土産店で購入するのと、蚤の市のような場所で購入するのでは倍以上の差が出る。空港に行くとさらに高くなり、チョコレートでも市内のスーパーより高くなる。

 

JALのモスクワ便の客層はキャビアをお土産に買うご高齢のツアー客である。大体が添乗員付きでモスクワ・サンクトペテルブルグを10日間程度で周遊するものである。その為かビジネスクラス・エコノミークラスどちらとも若い人が少ない。1グループだけ大学の研修かと思われる団体もあったがあとはほぼほぼツアーグループの50代以上という雰囲気であった。

 

こうした高齢者ツアーグループには添乗員がついている。今時添乗員付きのツアーは少なくなってはいるが、ビザや言語などいろいろめんどくさいことが多いロシアでは現役である。モスクワで見かけた大学生ぽい旅行団体にもロシア人の日本語ツアーガイドが同行していたし、個人行動をしている日本人を見かける方が少なかった。

乗客はビジネスクラス、添乗員はエコノミークラスである。しかしツアー客の世話をするにはビジネスクラスに乗り込む必要もあるし、誰よりも先に降りる必要がある。行きのモスクワ行きでは飛行機が到着するなり2人の添乗員がすごい勢いで出口に向かう姿を目撃した。そして帰りの機内ではアンケートを書かせたいのか出発直前までビジネスクラスに居座っていた。しかし飛行機も動き出すというのにビジネスクラスの辺りでお客さんと立ち話。客室乗務員にエコノミークラスに文字通り押し込まれていた。離陸後、ベルトサインが消えるなり再び現れたのは言うまでもない。ビジネスクラスとエコノミークラスはカーテンで仕切られているが添乗員はお構いなし。何度か客室乗務員に注意されていたが、それよりも自分の仕事をさせろと言わんばかりであった。どこの会社とは言わないが日本の大手旅行会社の添乗員。マナーが悪すぎる。下手なことをすれば搭乗禁止になって仕事が困るのは自分だろうに・・・

 

モスクワ線はB787-8

当時、JALはモスクワ線をB787-8で運行していた。元々はB777-200を使用していたがB787の導入とともにサイズダウンしている。実際そこまで大きな需要がないと言うことだと思われるが、往復ともにエコノミークラスは満席に見えたのである程度の需要はあるようである。

 

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モスクワ線のビジネスクラスは個室になっているJAL SKY SUITE」が導入されている。その昔、JALビジネスクラスと言えば「エクゼクティブクラス」と呼び、「SEASONS」という愛称がついていた。季節ごとにヘッドレストカバーの色を変えるなど四季を感じさせると言うコンセプトだったと思う。個人的にはエグゼクティブクラスという名称の方が重厚感があり、JALの仰々しい会社の雰囲気にもマッチしていると思うのだが・・・

ビジネスクラスであってもこの路線ではウェルカムドリンクのサービスはなかった。それよりも早く早く出発しようという雰囲気が漂う機内であった。なんとなく余裕がない印象を受ける。これから出発するという余韻のようなものは一切なく、平均年齢60歳の乗客と、彼ら彼女らの大量のキャビアを載せてささっと離陸してしまった。

エバー航空ビジネスクラスの搭乗記でも隣に変なおじさんが来たと書いたが、今回も隣にはもれなく変なおじさんがやってきた。隣と言っても離陸すればバーティションで区切ることができるので顔を合わせる必要はない。このパーティションは離着陸時は下ろすように言われているが離陸後は上げておくことができる。操作はどちらの座席からでも可能なのだが、離陸後すぐ、何も言わず隣のおじさんはパーティションを上げた。

「おい、なんか一言あるだろ?」

というのは私の声であるが、私だってパーティションを上げたい、しかし共有物である以上声をかけて操作するというが礼儀ではないだろうか。服や指が引っ掛かったらどうするつもりなのだろうか・・・

もちろん着陸前も無言でおっさんは下げてきた。

そしてこのおじさん、妙に体の動きが多い人で体の置き場所がなかなか見つからないのか寝ていてもよく体を動かしていたがその度に私の座席まで響く。結局私はその動きによって満足に寝られなかった・・・

飛行機の快適度は隣人で決まると言っても過言ではない。

 

 機内食

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前菜:ツナパストラミのスモーク・ボッタルガ添え、ヨーグルト風味のクラブケーキ、ラムフィレ肉のベイクポルトベロ・マシュルーム添え

スープ:コンソメスープ

メイン:牛フィレステーキ 和風ソース

 

奇跡的にメニュー表を持っていたのでメニュー名は正式である。

夕食として提供されたものではあるが、前菜、メインとコース提供ではなくワンプレートでの提供であった。私の予想でしかないがおそらく成田で往復分を搭載し、モスクワでは必要最低限しか搭載していないように思われる。というのも味がかなり日本的であったという点。過去に乗った人のコメントにも乗務員からそう聞いたというものを見たことがあるのであながち間違っていないと思う。

 

この時のメニューセレクトは和食1種類と洋食2種類(牛・魚)からのチョイス。オーダーを取りに来たパーサーに

「洋食の牛肉をお願いします。ただ数の調整がうまくいかなければ何でも大丈夫」

と伝えると

「お心遣いありがとうございます。牛肉、ご用意させていただきますね」

と応えてくれる。

ビジネスクラスでは乗客数に対して適正プラスアルファの機内食しか搭載されておらず、乗客の希望と数を合わせるのは至難の技で乗務員はかなり気を揉むと聞く。そこでいつもセカンドチョイスまで伝えるかあまりもので良いと伝えるようにしている。ユナイテッド航空だとセカンドチョイスはデフォルトで当たり前のように第2希望までオーダーがとられていくが、ご用意させていただきますの言葉にさすがJALと思ってしまった。

 

味は全て普通。ただ全体的に温度が低い。低すぎる。

ステーキが温かくないというのもいただけないが、驚いたのはスープである。

ぬるい。そして入っている玉ねぎがだった。

おそらくスープの熱で火を入れるようになっているのだろうが長時間冷蔵・冷凍保存されていた玉ねぎと容器にスープを注いでもそりゃ温い。玉ねぎがシャキシャキと玉ねぎサラダでも食べている感覚であった。

 

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デザート:グリーンティーティラミス

最後はデザートで、これは和食洋食共通である。

食事中のワインの残りがあったのでワインと上のベリーから食べた。ワインにもよるがベリー感の強めのワインだとベリー系のフルーツと合わせるとよりワインのベリー感が際立つのでおすすめである。

 

機内食中、年配ツアー客が客室乗務員に「おいしい、本当においしいわ」と何度も感嘆の声をあげていた。長期間の旅行でパンばかりでコメが久しぶりに食べられて嬉しいとのことだった。そう、こういった便では圧倒的和食人気で洋食、しかも牛肉はそもそも客室乗務員は困らないチョイスだったようだ。

しかしおいしいと声を上げるご婦人を見てなんとも微笑ましかった。リタイヤ後、夫婦で若者ですらなかなか行かないような国にビジネスクラスで旅行に行く。老後など想像する年齢ではないが、素敵な老後である。

 

快適だけど・・・

ビジネスクラスの快適性は申し分ない。

ビジネスクラスと言っても昔はベッドにはならなかったし、ベッドになっても斜めの状態で、今無きノースウエスト航空ビジネスクラスなんか滑り台であった。しかし近年は180度のフルフラットシートが導入されておりベッドとしての快適性は申し分ない。今までのビジネスクラスが椅子の改良型であり、いかに椅子をベッドに近づけるかとしていたところが、近年はベッドの改良型となっており、いかにベッドを離着陸時と食事の時だけ椅子の状態にできるかというようにも見える。それだけ快適性も増している。

 

しかし先述のように隣の人があまりにも動くのでその振動からなかなか眠ることができなかった。しかもこのシート、確かにフルフラットになるのだが非常に地面に近いのと心許ない感じを受けるシートであった。隣の人の少しの動きが伝わるくらいなので相当心許ない。もちろんシートの上にエアウィーブを敷いて眠ることができるので心許なさはある程度軽減されるのであるが、それでも床に寝ているような感覚とともに背中に心許ない感じを受けた。もちろん昔の座席に比べれば驚きの進歩である。しかしエコノミークラスでもそうであるがそれに合わせて徐々にクッション部分が薄くなってきており、昔のような重厚感を感じないのが残念である。

と文句を言いながらもなんだかんだ寝ることができた。ただモスクワ時間ではまだ夜の7時、8時。朝ゆっくり寝た私はなかなか寝付けなかった。

 

時々起きていた。その時通る客室乗務員の人には何かお食事を出しましょうか。と聞かれたが寝静まった機内で匂いを発生させるのは犯罪である。丁寧にお断りし、飲み物だけに留めた。

 

2度目の食事はアラカルト

2度目の食事はアラカルトで自由な時に注文できる。しかし先述のように暗く皆が寝ている中で匂わせる訳にはいかない。どんなに自由にご注文くださいと言われても日本のような「同調圧力」の強い集団の場合、1人だけ食べるというのは憚られる。

結局到着から1時間半前に一斉にオーダーが取られるのでその時に一緒に食事をいただくこととなった。もちろん客室乗務員としてはバラバラにオーダーしてもらった方が圧倒的に楽であろう。何しろ食事の種類が豊富なのである。

サンドイッチ:2種類

カレー:1種類

麺類:2種類

和食:1種類

洋食:1種類

計7種類の食事があり、そこにチーズとフルーツが加わる。夕食はプレートサービスなので温まったものをお盆に載せて配布するだけで3種類しかない。しかしこのアラカルトは調理工程を含むものある上に乗客によってバラバラ。乗客によって時間差があるからこそ成立サービスのように感じるが、最初の食事の後、睡眠、到着前の食事の時間間隔を考えるとモスクワのような10時間程度の路線では難しいだろう。しかも何度も言うように匂いを考える必要がある。サンドイッチならまだしもカレーに麺類は犯罪である。オンデマンド形式はニーズに応えるという意味ではいいサービスだが実際はそううまくいっておらず、乗務員の負担増になっているだけではないかというのが私の予想である。

 

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アラカルト:味噌ラーメン、リフレッシュメント(フレッシュフルーツ)

私はラーメンをいただいた。起きてすぐにカレーというのも微妙であったのと、せっかくならば日系航空会社でしか食べれそうにないものを食べてみようと思ったからである。ちなみにご高齢者の多いフライトなので一番人気は和食で、ラーメンやカレーといった単品は全然オーダーが入っていなかった。

ラーメンとフルーツというのもミスマッチではあるが朝なのでさっぱりしたいというせめてもの気持ちである。
 

味は・・・まあまあ

店舗で食べるようなラーメンとはいかず、家で食べるラーメンの域は出ない。おそらく冷凍麺かチルド麺をお湯で捌き、スープベースをお湯で溶いたものに具を載せているのだと思われる。やはり上空なので熱々というのは難しい。具材によってある程度本格的な印象を受けるが味わいとしては某生麺タイプのカップ麺と大きな差を感じなかったというのが感想。もちろん機内で食べるという付加価値があるので満足ではあるが次からは頼まないだろう・・・

 

成田空港に到着

モスクワを日没に出発した便は早朝の成田空港に到着した。

フライトの時間帯としては日本を夕方に出発し朝到着するアメリカ路線と同じであるが、モスクワは飛行時間も短く、日本で朝を迎えるほど十分には休めなかった。

私は滅多にヨーロッパ方面に行かないのであまり経験がなかったが朝の成田というのはヨーロッパからの到着が重なるようである。入国審査に向かっている時、多くのヨーロッパからの到着客と合流した。

見ているとどう見てもこれから出勤しますという雰囲気の人々が多い。忙しいビジネスマンは大変だなと思いながら私は帰路についた。そして荷ほどきすることもなく寝てしまった。

 

久しぶりのJAL、しかもビジネスクラスということでさすがだなと感じたフライトであった。簡単に良く言えば上品、悪く言えば窮屈。トイレに行った帰り、ギャレーのスナックをとって行けばドリンクを聞きに来てくれる。素晴らしいなと思ったと同時にいい意味で一方方向のサービスだなとも感じた。完全に乗客は受け身でいられる航空会社とでも言おうか。サービスは双方向のやりとりで成立すると感じるがここでは乗客側のベクトルは必要とされていない。よく乗る米系航空会社は乗務員と乗客の双方向のベクトルがうまく合わさりよりよいサービスに感じるがここではどうも違うようである。

もちろん日系のお客様は神様のような至れり尽くせりも悪くはないだろうが、慣れていない私には上品すぎて窮屈に感じたのと同時にそこまでやってもらわなくてもと過剰だとも感じたフライトであった。